(開催報告)メディア懇談会「エネルギー基本計画に異議あり!」

開催日時:2018515日(火)1330

開催場所:日本プレスセンタービル10階ホールC

登壇予定:

辰巳菊子 (日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 基本政策分科会委員)

浦郷由季 (全国消費者団体連絡会 事務局長) 

二村睦子 (日本生活協同組合連合会 組織推進本部長)

大野輝之 (自然エネルギー財団 常務理事)

松原弘直 (環境エネルギー政策研究所(ISEP)理事・主席研究員)

  小山田大和 (エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議事務局長)
  参加記者:25名

★自然エネルギーアクション・アピール

自然エネルギーの主力電源化を実現するエネルギー政策への転換を!

 

私たち「自然エネルギーで豊かな日本を創ろう!アクション」(以下、自然エネルギーアクション)は、自然エネルギーを基礎とした社会づくりを希求する団体間のネットワークとして201412月から学習会やシンポジウムの開催、エネルギーに関連する政策への意見提出などを行ってきました。

現在、政府の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会においてエネルギー基本計画の改定案が検討されており、427日の会合で改定案の骨子が公表されました。(明日516日に開催予定の同会合には成文案が示される予定です)。

エネルギー政策は、国民生活と日本の未来に大きく関わるものであり、政府審議会内に止まらず広く国民的な議論が必要であることは言うまでもありません。しかし、これまでのところ、今回のエネルギー基本計画改定に関する議論は、既存のエネルギー政策を是とする委員が大半を占める会合の中だけで行われています。

私たちは、自然エネルギー(=再生可能エネルギー)を活かし、日本の社会・経済の発展そして地球全体を持続可能なものにしていく立場から、大きく次の2点を求めます。

1.自然エネルギーの2030年目標を大幅に引き上げ、主力電源化実現の方策を、より明確化・具体化にすること

2014年に現在のエネルギー基本計画が策定されて以降、国際的に大きな変化がありました。201512月に採択されたパリ協定では、今世紀後半の脱炭素化が明確な目標として定められ、自然エネルギーはその最重要の手段として世界的に大規模な導入が進んでいます。また、同年9月に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」もクリーンなエネルギーの導入を掲げ、自然エネルギー拡大を促進しています。これらを契機として、各国政府のみならずビジネスの世界でも、長期的な視野から環境や社会に配慮した経営方針が次々と公表されてきており、自然エネルギーの利用はその柱となっています。今や世界的には各国政府、企業、投資家のコスト・便益の経済合理的判断によって自然エネルギーが選択され、大きく拡大していく状況となっているのです。

世界的に進むこの「エネルギー転換」に対応するだけでなく、むしろ先んずることが必須であり、自然エネルギーの大量導入とそれを前提とした電力システムを展望すべきです。現時点で示されているエネルギー基本計画骨子案においては、「再生可能エネルギーの主力電源化」という文言こそ記されていますが、具体的な2030年の導入目標に関しては、SDGsとパリ協定が採択される以前に決められた現在のレベルの引き上げを求めていません。主力電源化のための制度づくりについても言及が弱いと言わざるを得ません。今般のエネルギー基本計画の改定においては、2030年の自然エネルギー導入目標の大幅な引き上げを明記し、「再生可能エネルギーの主力電源化」に向けたメッセージをクリアに発信することを求めます。

再生可能エネルギーの大量導入は、柔軟な運用の難しい原子力への依存とは両立しません。また石炭火力については世界的な「脱炭素」の流れの中では可能な限り低減していくべきです。「あらゆる選択肢の可能性を追求」の名の下で方向性を曖昧にせず、再生可能エネルギーを最大限導入すること、そのための方策を優先的に講じられるような計画とすべきです。

2.国民との双方向的なコミュニケーションの充実を進めること

2011311日以降、国民の中に育まれた意識の変化をエネルギー政策に生かしていくべきです。

原発事故後に改定された現在のエネルギー基本計画の最終章「国民各層とのコミュニケーションとエネルギーに関する理解の深化」部分の記述はそれ以前に比べて手厚くなり、特に「双方向的なコミュニケーションの充実」が盛られた点で質的にも前進したと思います。しかし、この記述に基づいてこの間エネルギー政策をめぐるコミュニケーションがどう進んできたのかということが問われなければなりません。

一方で、今回のエネルギー基本計画の改定については、検討途中での意見交換会や意見募集等は行われず、審議会委員からの意見によってようやく意見募集が行われるようになったという経緯もあります。

原発事故をエネルギー政策の出発点として位置づけ「深い反省を一時たりとも放念せず」取り組むのであれば、エネルギー基本計画においても「国民との双方向的なコミュニケーションの充実」を更に充実・深化させることが必要です。

骨子案においては、現在のエネルギー基本計画から大きな追加・変更はされないように見受けられますが、国民とのコミュニケーションのあり方についてはさらに踏み込んだ内容とするよう求めます。

 

以上


(写真)自然エネアクション20180515メディア懇談DSCN2832